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アンプの自作 マニアなら知っておきたいオーディオ雑誌のお宝記事

ウェスタン91Bアンプの音の秘密(the secret of Western 91B amp sound)

投稿日:2023年1月5日 更新日:

これまでの雑誌をまとめると、91Bアンプの音の秘密は以下の通りです。先生方ありがとうございます。

1 ウルトラハイゲイン 及び 深いネガティブフィードバック

3段増幅により、ウルトラ高感度になっていますので、高速なトランジェントに寄与にしています(雑誌「ラジオ技術」1999年4月号19頁「高帰還300Bシングルアンプの製作(1)」 氏家高明先生(文献1))。思想的にはマランツ7のイコライザ部分と通じるものがあるとのことです(雑誌「ラジオ技術」マランツ#7思想編 1998年11月氏家高明先生(文献2))。3段増幅でないと、音の力が出ないとのことですから(雑誌「管球王国」vol22 2001 AUTUMN 「管球アンプ・キットを「組む」愉しみ W.S.I91 Type)(文献3))、我が国のアマチュア諸先輩方に作られてきた、2段増幅のいわゆる91タイプシングルステレオアンプは、91Bアンプの思想を踏襲したことになりません。

おそらく、ネガティブフィードバックによって、スピーカーの動きに応じてネガティブフィードバックがかかり、スピーカーがきちんと追従制御されているものと思われます。(※1)

2 初段310Aのスクリーングリッドへの帰還がされている(上記文献1)。

この文献には、「この不帰還は、マランツ#7のイコライザ同様、緊張した研ぎ澄まされたピントの合った音質になる可能性を秘めている」とあります。

3 電源を介したポシティブフィードバック

300Bのカソード及び、終段の電源のコンデンサ(capacitor)の容量が、意図的に小さく設定され、低周波が入ると、初段、2段の310Aに大きな影響を及ぼし、あたかもポシティブフィードバックがかかるようになっています(雑誌「無線と実験」2020年12月号72頁「原器忠実型300Bシングルモノーラルアンプ」小林一智先生(文献4))。この文献によると、300Bのカソードのキャパシタは、91Aよりも小さくなるよう改定されているとのことです。その他(※2)

4 GFフィードバック(おそらくポシティブフィードバック)

300Bのカソードから、1ufを介してグリッドに帰還がかかっており、速度改善につながっています(文献4)。

追伸

5 交流点火となっている。交流点火の方が音の質が良いと言われている。コンデンサインプットのノイズのスペクトルの観点が関係しているのでしょうか。

なお、多量のネガティブフィードバックをかけているので、交流点火でも、B電源さえリップルを抑えつければ、ノイズは1mVぐらいに抑えることができます。

6 機器の安全のためか(文献4)、多くのブリーダ抵抗が設けられ、常時、アイドル電流が流れています。

これにより、電流変化に対し音の安定化につながっているとの見解もあります。

 

これらを踏まえて、私は、91Bタイプのモノラルアンプを作りました。音の立ち上がり立下りが速いように思えます。「プリプリした若々しいエネルギー」(文献3)。立ち上がり、立下りがきちんと制御されているので、プリプリした感じに聞こえると思います。


※1 アナログアンプの技術者からすれば、ネガティブフィードバックの目的はひずみ低減などかもしれません。しかし、ロボット制御の素養を得た私からすれば、この構造は、帰還した信号はスピーカーの動きを代表する信号であって、初段信号との誤差を0にするようコントロールすることにより、スピーカーの動きを常に入力信号に追従させるモーションフィードバック的なものかなと思っています。ハイゲインであればあるほど、その誤差も速度応答も改善されます(例えばオペアンプを使って電源を精密に制御するのはそのハイゲインを利用するため)。このような誤差増幅の観点を徹底すれば、本来は、初段に帰還する信号の大きさのレベルは、初段信号と同じレベルに調整すべきなのかなとも思います。雑誌を見ていると、ネガティブフィードバックの大きさで音質が目を見張るぐらい変わるというのは聞いたことがあります。

なお、ネガティブフィードバックによるひずみ低減の効果は、増幅後の最終波形を抵抗で分圧したことによるリニアなフィードバックにより、不完全ながら誤差フィードバックが生じることにより、ひずみが改善されているようにも思えます。私はそのロボット制御の理論を大学で学んでいたときにオーディオを始めましたが、上記の誤差フィードバックの理論からすると、「ネガティブフィードバックの効果がひずみ低減である」、「6dBのネガティブフィードバックによりひずみ低減」と書いてあるのを見て、理屈に合わないように思える違和感を覚えました。初段での帰還後の誤差を0にしようとしていない点で、ネガティブフィードバックの意味が破綻しているように思えたからです。

※2 この文献4によると、300Bのカソードは20uFまで、チョーク後の電源のコンデンサは合計20uFまで(チョークが10Hの場合)とするべきです。チョークトランスは、音のエネルギーを溜めて吐き出すことにより、音のエネルギーを封じ込め、これにより、弾力的な音に貢献しているのでこれを外せません。また、この作用からすると、ステレオアンプではこの電源を介したフィードバックの作用が破綻し、音色が変わってしまうことが予想されます。また、B電源を各増幅段でトランスごとに分離してしまうと、この作用が起こりません。また、ハムノイズ対策をするには、最終段のチョークより前にフィルタを追加するなどが必要です(文献4)。もっとも、通常のアンプは整流管のラッシュカレントを防ぐため、チョークの前段はコンデンサの容量を少容量とし、チョーク整流後に大容量のコンデンサを挿入しているので(WSIの91BTYPEは電源の終段に60uFを挿入している)、その辺の兼ね合いが難しいです。チョーク前の電源の初段で大きなコンデンサを入れるには、マランツ7のような抵抗インプットで電源のインピーダンスを上げるしかないように思います。「ラッシュカレント」で検索すると、電源のインピーダンスに反比例するので、簡易計算によると、「電源電圧÷インピーダンス=流れる電流」となり、電源の初段のコンデンサの前に抵抗など何も入れないと、ダイオード+多大なコンデンサの数十Vの電源の場合、ラッシュカレントは4Aとなるという結果がありました。何かしら抵抗やNTCサーミスタ、コイルなどを入れ、インピーダンスを上げると、その反比例のおかげでラッシュカレントがかなり改善されるようです。また、274Aなどインピーダンスが大きい整流管の方が理屈に反して音がよいとも言われていますので、その点でも、抵抗を挟んでおくのがよいと思われます。100Ωを初段のコンデンサの前に挟むと100~140mAで、10~14vぐらい下がりますが(消費電力1~2W)、一般家庭でのアンプの出力にあまり影響するわけでもなく、かなり整流管にとって優しい動作となると思います。チョークインプットが、ラッシュカレントの点でも、ノイズスペクトルや音質の点でも望ましいのかもしれません。もっとも、チョークインプットを用い、91Bの”電源フィードバック”を踏襲し、かつハムを抑えるには、終段のコンデンサの前にチョーク、整流管の直後にもチョーク、と2つのチョークを置く必要があり、その置き場所の工面や、チョークインプット専用のチョークが必要になり、B電源の電圧を大きくすることに配慮する必要があります。

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