前回に引き続き、定電圧回路について述べますと、
オペアンプ等の差動増幅を用いて、誤差を消去している回路によれば、
その周波数帯域では、増幅率を一定にできます。
そうすると、負荷に対する制動力(つまり、負荷に電流が生じた場合の、ロードラインの一番右側の高電圧の部分)や、リップルや高周波ノイズに対する低減率を、周波数帯域で一定にすることが、容易にできます。
ちなみに、制動が悪いとなると、
ロードラインの基準がずれ、音ににじみが生じることになると予想されます。
これに対し、
R(抵抗)C(コンデンサ)によるパッシブフィルタは、
あくまで高周波を削減するだけですから、その制動力に
どうしても、位相ずれやゲインの差が生じることになります。
RCRフィルタ((1/jwC)+R2)/(R1+(1/jwC)+R2)フィルタ)を使えば、
一定にできますが、かなりの物量を投入する必要が生じます(下図)。
(ここで第1の変極点は主に、R1、Cで決まり、第2の変極点はR2、Cできまり、10hzにするには、計算上R2(Ω)×C(μF)はおよそ16万以上とする必要があります。上記で、R1は、300程度にすればパッシブフィルタのみとして一応成立しますが、リップル低減率がかなり厳しくなります。R1を300を超えた値としても、桁違いにしなければほとんど特性は変わりません。
また、コンデンサの量を大きくすると、安全面で問題というだけでなく、整流管のラッシュカレントが問題となり、これについては、emission labsという真空管のサイトに詳しく載っています。
274Aなら4μFまで、ないし突入電流を600mAに抑える必要があり、
アース側に、抵抗を挟むことを要求しています。
4μはかなり厳しいので、要求通りラッシュカレント(突入電流)を実測することになりますが、
ラッシュカレント(突入電流)を測るには、調べたところ、カレントプローブなるものをオシロに接続し、そのカレントをトリガとして、突入時瞬間の電流値を測るべきことを知りました。
ちなみに、真空管の両波整流のltspiceモデルをここにおいておきます。sinkuukan_dengen.ascここで300Ωは整流管の抵抗値。
話は戻って、このパッシブフィルタの難点を、一応解決する1つの手段が、
前回述べたVCCS(ボルテージコントロールドカレントソース)電源(シリーズ電源)です。
高電圧タイプのトランジスタとしては、2SD1409、2SC3333、2SC3632などがありますが
(前回の記事参照+6CA7ppパワーアンプの製作「ラジオ技術」2013年10月号、加藤一郎)、
直接アース間で、高電圧を受けるのではないから、
必ずしも、高電圧タイプを使用する必要はないようにも思えます。
シミュレーションでフィルタ特性を見てみると、意外と暴れていることも多いので、
いずれにせよ、シミュレーションで、フィルタ特性を検討する必要があります。
例えば、上記R2で、1.6kの代わりに0.1Ωを入れると、意外にもかなりの暴れが生じます。ということはアース線の抵抗成分により、ころころ音が変わる可能性があります。
その他、いろいろシミュレーションをやってみましたが、
左側の変極点の周波数を落とすには、かなりの物量が必要になります。
また、CRフィルタの場合、時定数がw=2π・f=1/CRですが、
チョークの場合、w^2=1/LCとなり、
wを減らすには、チョーク整流のほうが物量が必要となりますね。
また、3端子レギュレータなどを入れると音が死んでしまう、
パッシブの2段チョーク電源がよいという意見もありますから、
聴感上も検討する必要があると思いますね。