前回検討したフェアチャイルドのj105を使った定電流点火であるが、
jFETの場合、電流が多ければ多いほど、定常部分で動作するには高い電圧を必要とする。
例えば、定電流素子のE101などは電流が少ない品種ほど、定電流特性は高性能となる。
j105を使う場合、7Vぐらいの電圧降下は必要であるが、
6.3V巻線を追加しても、25Vぐらいにしかならず、
橋本トランスの場合5V巻線で、電圧が足りなくなる。
ちなみに、15V巻線に、6.3Vを追加して、交流21Vとする場合、
巻線を逆に接続すると、巻線が相殺されて10Vになってしまう。
その場合は、一方の接続逆にする。逆かどうかは接続してみないとわからない。
j105を使う場合、j105の電圧降下は6.5Vぐらいにするしかなく、
ノイズ低減量は、15mV→6mVと1/3なった。
これでは残念ながら、性能が足りない。
前回の記事を参考にされた方には申し訳ないが、
エミッションの振れを抑圧するという定電流のメリットがなくなるので、
以下のような、シャントレギュレータTL431を用いた定電流点火を考えた。
150mAが2系統必要である。
この方式によれば、制御ICによる電圧降下は、3~5Vぐらいで済む。
<9月16日追記>上の2つの図を訂正しました。tl431周りに誤植がありました。
<9月18日追記>上記訂正した図で、0.05μFは、セラミックでして、音が固いのでスパイクノイズが生じている可能性があり付けたものでして、アイテンドウで、コンデンサのセット([SMC-SP23] や[MCC50V-500P]など、「パーツパック」)として入手したものです。セラミックのコンデンサは、高周波においてもノイズ削減効果があり、1μFの方が聴きやすいことが分かりました。ノイズが小さくなるようです。tl431のカソード側には、tl431のピンのなるべく付け根に、このコンデンサをつけますし、コンデンサの足もできる限り短くします。容量によっては発振するので、データシートを読んだ方がよいです。tl431のカソードアノード間で5vだと2μF程度までです。また、tl431のrefとアノード間につけると、発振するなど異常な動作をするようです。
TL431は、アノード(マイナス側)、レファレンス間を2.5Vにするよう制御する。
これにより、一般的には、
TL431のカソード(プラス側)の電圧を目標の値になるようにすることができ、
この電圧が2.5V程度だと、回路は正常に動いている。
それが0.1V程度だと、トランジスタなどの接続が逆になっているなど、
接続が間違っている可能性が高い。
また、TL431には電流をたくさん流した方が ノイズ/信号比はよくなるはずだが、
余りたくさん流すと、発熱が大きくなり、1.0Vぐらいに下がってしまう場合もある。
結局、TL431には、10mAぐらい流すのが適当であるように思われる。
カソードに接続する抵抗は、今回は(直流電源の電圧ー5)/10mA程度を流す。
レファレンス電圧がおかしい場合で、トランジスタ等の接続も間違っていない場合には、
この抵抗を訂正する。
それから、TL431には、NJM431などのメーカー違いや、
オペアンプ形式などのパッケージ違いがあり、
メーカーによっては音質が異なるようであるし(ミミズクというサイト)、
オペアンプ形式の場合、形が大きいので、
透過損失容量を大きくとれ、より大きな電流を流すことが出来る。
トランジスタ(NPN)の基本は、
トランジスタのエミッタに抵抗Rを付けて接地し、
ベースに一定電圧VBを与えると、エミッタにはVB-0.65V程度の電圧が生じ、
(VB-0.65)/Rの定電流Iが流れる、
したがって、トランジスタはVBを制御することで、電流量を制御できる、
という電流制御機器と考えることが出来るという点にある。
このとき、ベースからは、I/hfeの電流が引き込まれる。
(「トランジスタ技術」2014年8月の特集p51~参照。)
トランジスタのエミッタに抵抗をつなげている(コンデンサを並列しない)限り、
トランジスタの増幅率は、抵抗値のみで決まってしまい、
素子固有の直流増幅率hfeとは関係ないが
I/hfeの電流が引き込まれる(上記文献参照)。
ただし、hfeが大きいほど、ベースから引き込まれる電流量は小さくなるから、
その分、基準となる定電圧回路への悪影響が小さくなるので、
ダーリントントランジスタなどは、引き込まれる電流が小さい点で有利になる。
以上の説明からわかる通り、
「トランジスタは、ベース電流のHFE倍の電流をコレクタに流す」と説明されるが、
実用上は、考え方が逆である。
つまり、コレクタ電流を制御するためには、
ベース電流I/hfeを、積極的に制御入力とするのではなく、
結果的に生じるされる副産物というような考えになり(上記文献参照)、
トランジスタの制御入力は、通常はベース電圧VBとなり、
VBを制御して、トランジスタに流れる電流を調整する。
というわけで、VBに一定電圧を加えることが定電流点火の基本となる。
VBにはTL431のカソード電圧が印加されるが、
アプリケーション例に基づき、TL431の端子間を抵抗で分圧していないので、
何ボルトになるかは私には、いまいちわからない。
他の回路との相関で決まる。
分圧している場合には、2.5V×分圧比でカソードに、目標電圧が生じるので
おかしな電圧が出ることは少ないが、
この回路では、どこか一つでも接続を間違っていると、
TL431のレファレンスの電圧が0.1Vなど、でたらめな値となる。
フィラメントの設定電流値は、
レファレンス電圧(レファレンス、アノード間)/トランジスタのエミッタ抵抗値で決まる。
今回は、2.5V/16.6Ω≒150mAとなる。
ちなみに、TL431ではどういう加減か、2.41Vとなることもある。
カソードの抵抗選択が、まずいのかもしれない。
トランジスタの選択としては、NPNで0.15A以上流せるタイプで、
プレート損失が小さくないものが好ましい。
小さいものは放熱の点で不利であり、発熱が大きく、放熱板なくては焼損の危険がある。
ただし、ミミズクというサイトによると、
これらを満たしつつ、電流容量が小さいトランジスタの方が、音の点で有利だという。
これは、トランジスタの想定外に小さい電流を流す動作環境では、直線性が悪くなるのかもしれない。
それから、TL431でなく、その構成要素のオペアンプも検討してみたが、
レギュレータに使った場合でも、オペアンプの音の特徴が出てしまうらしい。
このことからすると、線形性が高い方が好ましいということだろう。
今回は、そのようなことは考えず、将来の300Bへの適用などを考え
どーーんと大電流が流せる100V7Aの2SD1415Aを使った。
今回は、電圧降下は2.5V、電流0.15A程度だから
0.4W程度で、発熱はわずかである。
ちなみに、トランジスタの熱の計算については、
ロームのサイトの「トランジスタとは?」に詳しい。
外国のトランジスタで「Derate」というのは、(25度を超えると)
その欄の数値の割合で、許容プレート損失が減少するという意味である。
また、気温(25度)+熱抵抗×ワット数が、
既定のジャンクション温度(通常125度、150度など)を超えないようにする。
熱抵抗は、パッケージの大きさにより異なる。
放熱板を付けた場合に は、3度/Wなどに下がる。
以下は実装してみた図である。
クッション式の強力両面テープで、ラグ端子を張り付けた。
トランジスタは、熱の観点から、アルミまでの距離が薄くなるよう、普通のフィルム式両面テープを使った。
その上の黒い22pFのコンデンサは、楊枝で固定すべきだがまだやっていない。
トランジスタは、そのコンデンサの支えの楊枝が入るよう、微妙に位置を調整している。
なお、信号サブ基板の裏面をアップしていなかったので、ここでアップロードする。
トランジスタのコレクタ側(高電圧側)には、電源とほぼ同じリップル量の15mVが観測される。
つまり、フィラメントの印加電圧のリップルは1mV以下ということか。
聞いてみた。
泡立ちが良くなったというか、
周辺の空間情報、距離感が聞こえやすくなったというか、
きちんと制御されているというか、弾んでいるというか、
すっきりしたという感じである。
しかし、ソリッドになったというか、固いというか、
立ち上がり、立下りがより速くなったというか、
耳当たりがきつくなったという感じもする。。。
酸金のMOSの抵抗の音質かもしれないし、
エージングもしていないし、よくわからない。
元に戻れない感じは、確かにある。