前回(「氏家式マランツ#7アンプのノイズ対策1(ハムノイズについて)」)述べた「②ジー」というノイズは、インピーダンスの不整合なのかよくわからないが、入出力ラインから混入する可能性が高い。
そして、電源のノイズが2mVと小さいことから、50mVのノイズがどこで発生するかをオシロを見ながら探る。そうすると、入力段のノイズがアンプにより拡大しているのではないかと見当をつけた。
学生の頃、「ノイズ対策するには、電線にアルミフォイルを巻けばよい」というのを聞いたことがあるので、試してみると、ノイズが減少した。そのアルミフォイルの一端を、箱の無メッキの部分に添わせるとよりノイズが減少する。出力のラインもアルミフォイルを巻くとノイズが減少した。出力ラインは、もともとカソードフォロアでそれほどインピーダンスが高くないはずであるが、イコライザアンプということもあって、周波数調整する、47kΩの抵抗がアースと信号との間に架橋され、インビーダンスが高くなっている。氏家先生の記事では、パワーアンプの入力インピーダンスは、50kΩ以上が推奨され(そうしないと発振の危険があるそうである。「一杯の珈琲とクラシック音楽」というブログの「マランツ#7 [オーディオ]」のコメント欄参照。)
しかし、アルミフォイルだと、意図しない部分が接触して導通しやすく危険であり、管理が大変である。
<対策1>
そういうわけで、本質的対策のためには、シールド線を使うことになる。シールド線は、中芯線の周りに導線が配置されており、その導線をアースすると、中芯線のノイズをアースへ流すことが出来、ノイズが下がる。シールド線の処理は、外側の皮膜を剥いで、中芯線周囲の導線を集め、よじるとともに、中芯線も剥いでよじり、それぞれ、はんだめっきをしたら、周囲の導線と中心線とが別れる根本において、熱収縮チューブなり、エンパイヤチューブなりをかぶせて処理する。氏家先生の記事もそうなっている。
そもそも、今回のアンプでは、入力端子のセレクタ付近は、全部、中芯が1線のシールド端子で構成していたが、そのアースは、入力端子→セレクタ→信号ブロックのアース→電源のアースとかなり引きまわしているので、そういうノイズを流すアースが迂遠となっていたので、そのノイズを流す作用がいまいち効いておらず、アルミフォイルを巻いた場合にノイズが下がることとなったと思われる。
そして、(A)前回申したように、アースを入力端子でとると、ステレオアンプでは特に、2点でアースすることになり、ハムが生じる一方
(B)入力ラインのシールド線に飛びついたノイズは、入力端子付近でさっさとアースに流したいという要請は、
通常行われているような、中芯線が1本のシールド線では、矛盾する。
そこで、入力信号線の新しい流儀として、
①入力信号ラインとしては、単なるシールド線でなく、
中芯線が2本の2芯シールド線を使うのがよいのではないかと考える。
つまり、シールド線の周辺部分の導線は、迂回せずシャーシーなるべく近くにアースへ、
2芯のうち1本は、直流電源へ戻る側のグラウンドへ戻す。そうすれば、直流電源へ戻る側のグラウンドや信号線のグラウンド側は、入力端でアースされることはなく、電源のマイナス側で一点でアースすることができ、ハムを回避できる。かつ、入力信号ラインに飛びついたノイズは、上記アルミフォイルと同様の作用で、箱のアースへ流すことが出来、上記矛盾は生じない。というわけで、根本的対策は、入力信号は2芯シールドにするのがよいのではないかと考えている。近年のPCの電源を見ると、鎖状の金属線を編んだラインで巻いてある。GarrettaudioさんのTECHFLEXと同じような機能を発揮すると期待できる。
<9月2日追記>
・表皮のノイズは、シャーシーの任意のところではなく、やはり、一点アース、つまりアース母線へ接続する方が、ノイズも下がり、聴感上のストレスも下がるように思います
(「氏家式マランツ#7アンプその後の補足1(ノイズ対策、オリジナルのアース方法など)」のモガミ電機のサイトの資料参照。)。
<9月6日追記>
「RCAケーブルの自作」を検索すると、
シールド線の接続方法として参考となる方法がたくさん見つかります。
<対策2>
それから、アンプの出力線については、もとの氏家先生の記事では、普通の導線を最短距離で出力端子へ結んでいる。しかしそれでは、アンプの手入れをするのに、毎回その線を外す必要が生じるので、私のアンプでは、その2倍ぐらいの長さにして余裕を持たせている(この点は信号サブブロックと電源サブブロック間も同様)。そして、上記パワーアンプの入力インピーダンスが15kΩの入力トランスなので、仕方なく自作マランツ7アンプの出力線に、直列に直接手持ちの43kΩを追加していたところ、インピーダンスが更に高くなってしまい、ノイズが大きかった。それゆえ、アルミフォイルの対策が効いた。
しかし、アルミフォイルでは、他と接触して導通しやすく、トラブルが大きいので、
②根本的対策としては、
アンプの出力のホット側を単線でなく1芯シールド線とする改造を行った。
シールド線の芯線周りの線は、上記はんだめっきの後、単線をつなげ延長し、「ラグ端子GND」(秋月)、または「卵ラグ」を介して、箱(シャーシー)へつなげて接地し、飛びついたノイズをグラウンドへ流す。
ちなみに、43kΩを直列していたのは、出力インピーダンス(パワーアンプの入力インピーダンス)をいかなる場合でも、50kΩ確保するためである。上記「一杯の珈琲とクラシック音楽」のブログのコメント欄で、ボリュームを50k、100k並列にすると、合成33kとなって発振するとある。
<9月2日追記>
氏家先生の一連の記事で、このマランツ#7イコライザアンプの後段に好適なコントロールアンプが紹介されており、そこには、50kΩの固定抵抗と100kΩのボリュームが直列に入っています。つまり、プリアンプにおける50kΩの負荷抵抗というか、パワーアンプの入力インピーダンスを確保するためと思えます。
<対策3>
さらに、43kΩの出力線は、抵抗などで接地されることなく、パワーアンプの入力段までひきまわしていたので、そのパワーアンプの入力ラインでもノイズを受けていた。
そこで、上記対策2で述べた43kΩを直列して接続した、出力線のホット側を、ノイズ的に接地すべく、
③ホット側と出力端子のグランウンド側を、手持ちの20kΩ(本当は、15kにしたかったが)で接続した。
<対策4>
真空管V1の信号ブロックのアースは、マランツオリジナル(ヤフオクなどで写真を記録しておく)を見ても、アース母線がわざわざ分離されており、浮島になっている。(下の写真左側のメッキ線。左から順に真空管がV1、V2、V3と並んでいる。ネジ穴を介してV2とV3は共通アース線となり、電源へ帰還する。)
直流アースについては、後々の記事で述べるが、記事にはアース処理についてはあまり触れられておらず、かなり悩んだ。交流的には信号サブブロックのアースへ接続されているが、直流的には、上記浮島となっている以上、電流が電源ブロックへ帰る路がなく、電流が流れようがないからである。
氏家先生の記事を解析したところ、その写真で出力端子でマイナス側がV2と共通していることから、
「直流的には、入力信号のシールド線を介して、V2の出力端子のアース側を通り、V2の入力信号のシールド線のアース側→信号ブロックのアース母線→電源へ、というかなり迂回した帰還をたどる」ように思える。
<次の日に追記>
これは、少々間違いですね。出力端子でマイナス側がV2と共通しているからといって、
直ちに入力端子の位置で、V1、V2のアースが接続しているとはなりません。
氏家先生の記事を見ても、入力端子でアース母線のようなものは見えるけれども、
入力端子の位置で、V1、V2のアースが接続しているようには見えないですね。
「交流アース」と申していたのが、直流アースでもあって、
シャーシーに電流を帰還させているような気がしてきました。
なぜなら、V1のみが「交流アース」に接続され、V2、V3とはつながっていないからです。
V2、V3はアース母線を通じて、電源基板のアースへつながっているのです。
そこで、オリジナルの流儀に違反する可能性があるが、上の写真の通り、
④V1のアース側は、直接に電源の終端のコンデンサ側へ返す改造を行った(写真中央の黒い線)。
私のアンプでは以前のべたように、「アースループを防ぐため、入力信号側でなく、電源の終端のコンデンサ側へ一点アースすることにしている」から、その趣旨の徹底のためである。ここで直流アースを接続すべきコンデンサは、電圧分配された低電圧を安定化させるコンデンサとした。
この改造に伴い、アースループを防ぐため、
④-2 真空管V1入力の出力端子のマイナス側を、
V2と切り離し、V1の入力端子のマイナス側から取った。
氏家先生の記事では、徹底的にまねすべきと推奨されているが、係る④の改造をしても音質的には変わりないし(よりしっかりした傾向になる)、それだけでなく、V1側のみ生じていた「ピーン」という甲高い継続音のノイズ(発振音?)がかなり軽減された。
<対策5(将来)>
その他、将来的には、マランツ7オリジナルのV2のアースは、V3と共通だが、
共通インピーダンスの消去の観点から、
⑤V2も、V3のアースラインと切断し、
直接、電源の終端のコンデンサ側へ返すのがよいのかもしれない。
①の対策は、2芯シールドの入手を待っているが、まだ入手しておらずやっていない。
②③④の対策で、ノイズはオシロで測ると2mVとなり(オシロのノイズは、プローブ込みで0.8mV)、
とりあえずこれでよいことにした。
①をしなくてもノイズが下がったのは、それをしなくても、シールド線の‐側がとりあえず、箱のアースにつながっており、シールド線として機能していたのではないかと思っている。
①をすれば、電源のアース側に、かかる飛びつきノイズが混入することなく、
音の性質が改善される可能性がある。