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アンプの自作

トランスに直流を重畳する場合のスペーサ厚み(ギャップ)の計算

投稿日:2015年10月1日 更新日:

真空管アンプで、トランスを自作したいと考えた。きっかけは下の①の資料である。
トランスの作り方については、資料が少なく、
以前紹介した、「マニアなら知っておきたいオーディオ雑誌のお宝記事8 トランスの作り方」
に載せた①「アウトプットトランスの作り方」(「ラジオ技術」2001年/8月、9月)などが参考になる。
ちなみに、加藤一郎先生のサイトは、最近よりリンク切れとなっている。

トランスの設計資料については文献が数少ないが、その他、役に立つかもしれない、めぼしい文献を図書館の検索窓等で検索したので、列挙すると、
(あ)「トランスの基本動作と材料」(「ラジオ技術」1993/4月~7月)鈴木道夫、
(い)「スイッチング電源のコイルトランス設計」 磁気回路-コア選択-巻き線の難題を解く 戸川治朗 著
(う)「図解変圧器 基礎から応用まで」 坪島茂彦, 羽田正弘 共著 東京電機大学出版局 1981
(え)「インダクタ/トランスの解析Magnetics Designer入門 : スイッチング電源設計をシミュレーションで効率アップ 真島寛幸 著 CQ出版 2012」
(お)「トランス活用マニュアル」 松井昭夫, 高橋勇 共著 オーム社 1995
(か)「変圧器の原理と種類」 荻野昭三 著 電気書院 2000 (d-bookシリーズ)
(き)「変圧器の構造と結線」 (dーbookシリーズ) 2013/10/27 荻野 昭三 (著)
(く)「変圧器設計法 牧乙人 著 電気書院 1942」
などがある。

そこで、本題に入る。
真空管アンプのチョークトランス、出力トランスでは、直流を重畳するが、
トランスに直流を重畳する場合のスペーサ厚み(ギャップ)の計算はどのようにするかという点である。
まず、そもそも、トランスのコアにスペーサ(ギャップを)設けるとどのようになるかという点であるが、
(a)トランスの磁束密度が下がる。
(b)重畳した直流電流の量に関わらず、ある程度までインダクタンス一定の特性となる。

という点にある((b)については(「コイルを使う人のための話 第一部 – サガミエレク」(Adobe PDF)p14、「コイル・トランス:直流重畳特性|アンシス・ジャパン株式会社」参照)。)

ではその計算方法についてであるが、めぼしいまとまった資料は少なく、上記①「アウトプットトランスの作り方」(「ラジオ技術」2001年/8月、9月)の9月号に説明があるぐらいである。
ネットで、その文献に登場する「最適空隙比」を「トランス」とともに登場すると、ほとんど文献がなく、ただ、この文献①に基づくとみられる「6CA7シングルアンプ用トランスの設計メモ」以外は最適空隙比という言葉は一般的には使われていないようである。この設計メモは、文献①の式そのままを式変形して使い、設計されているようである。

以下、①を、引用させていただいた(赤枠は筆者が付した)。
文献が少なく非常にありがたい資料ではあるが、
説明に矛盾があり、理論的にも疑問を感じたから、注意や問題提起をしようと思ったからである。

trance_space_bunken.jpg

ここで、上の方で、「最適空隙比lg=22.1」とあり、下の方で「lg=22.1×0.001626」とあり、記述が矛盾してます。ここで、別のページによれば、22.1という数字は、平均磁路長(cm)と記述されています。それだけでなく、計算してみてもまったく計算が合わず、B=0.4π×NI/(1/μ+lg)という「基本式」が信頼できないと感じました。

そこで、理論的根拠を求めようとして、ネット上を探そうとしたのですが、「最適空隙比」という言葉は一般的でないようで検索に引っかからず、かつ「トランス」の設計資料は少なく困ってしまいました(「変圧器」と検索すると三相交流などの話が出てきます。)。それゆえ、上記のとおり、文献のリストを探しまくったのですが、「磁気回路 ギャップ」として検索して、ようやく役に立つ文献に多数出会うことが出来ました。

例えば、「OKAWA Electric Design 」というサイトの「磁気回路2」(文献②とする)や、茨城大学のpdf(「§30.11 磁気回路」)((文献③とする)が参考になります。

ここで、特に前者の文献②に基づき、自身が理解したことを書きますと、
磁気回路についても、オームの法則と同じように電圧、電流、抵抗についての計算が成り立ち
電圧に相当する「磁位」は、N×I(つまり巻回数×電流)であり、
そういう磁場を発生させる状態が、磁気抵抗で消費されるイメージとなる。
電流に相当するのが、その磁気回路に流れる磁束で、
その磁束の量は、磁気回路の断面積、長さ、透磁率によって定まる磁気抵抗で決まる。磁気抵抗は、磁気回路の断面積A、透磁率μに反比例し、磁気回路の長さに比例する。
つまり磁気抵抗R=L/(μ×A)になります。

そうすると、例えば、磁気回路の間に隙間(ギャップ)を設けると、
その隙間の部分(空気の透磁率)の磁気抵抗が、磁気回路に直列に入ることになり、

鉄心のμが、例えば6500、ギャップが0.1mmとしても、
鉄心に引き直して、650mm分の磁気抵抗が加わることになり
磁束密度がかなり減ることになります。

そういうわけで、この理論的根拠に戻り、
改めて、鉄心に通る総磁束Φ(ウェーバー)を計算しますと、
jisokumitudo3.jpg(式1)
N・I/{L/μA +  D/μ0A}となります。
ここで、A:鉄心断面(m2)、L:磁束長(m)。D:ギャップ長合計(m)、I:電流(A)、N:巻数です。
そして、磁束密度B(テスラ)は、面積当たりの磁束(ウェーバー/m2)になりますから、
jisokumitudo0.jpg(式2)

ここで、μ:透磁率の絶対値、μ0:空気の透磁率≒真空の透磁率、μ’:比透磁率
また、1ガウス=10^-4テスラ、
真空の透磁率=4π・10-7テスラ =2.5・10-6テスラ =4π・10-3ガウス
となります。

さらに、上記文献①の「B=0.4π×NI/(1/μ+lg)」に合わせるため、
1/μを露出するよう、以下の通り、式変形してみました。
jisokumitudo33.jpg(式3)
ここで、
上記文献①の0.4πは、この4πに単位を合わせる計算をしたものと推測できますが、
割り算の項には、Lが掛けられますから、(1/μ)が独立項として足し算になる意義がよくわかりません。
また、同文献のp56には、「実効断面積A  15.8mm2」となっていますが、
C(35mm)×t(50mm)×0.9=15.8cm2の明らかな間違いです。
さらに、この文献では、「透磁率」が「6500」であるなどと書いてありますが、
「オリエント コア」で、新日鉄のpdfを検索して分かるように、
これは、厳密には、比透磁率の間違いです。

というわけで、上記文献を引用し、注意、問題提起を促すことにしました。

また、上記文献の「スペーサ厚み=最適空隙比×平均磁路長/2」は、
EIコアにおいて、隙間はEIで、3つできることになるはずですが、
断面積はEの中央部の―とコとの接続部分の断面積で、
その他コの部分の角の断面積はその約半分となっており、
その断面積を考慮して、2倍にしものと考えられます。
つまり、ロ型の磁気回路を2つ付き合わせた「ロロ」型コアと考えると、
それぞれの隙間4つのうち、2つが付き合わされ磁気経路の断面積が倍になっているという考え方になると思います。
この式を変形すると、スペーサ厚みx2=上記Dとなり、
理論的には、(式2)に戻り、これを代入して、以下の式で計算すべきことになります。
jisokumitudo22.jpg

それから、上記文献では「0.4π×NI/(1/μ+lg)」などとしてありますが、
単位の指示もよくわからないので、すべてメートル、アンペア、テスラに直して、計算します。
ここで、上記①の文献では、1次巻き数N=2984回、実効断面積A=15.8cm2、平均磁路長L=22.1cm、Φ=8000ガウス、比透磁率μ’=6500、I=80mAを採用しており、
m、A、テスラの単位系に直しつつ、再計算すると、
8000ガウス=8000×10^-4テスラ
={4π×(10^-7)×2984×(0.08)}/{(0.221/6500)+2d}

0.8テスラ=0.000299984/(0.000034+2d)
.000299984/0.8=0.00037498=0.000034+2d
2d=0.00034098(m)=0.34098(mm)
よって、d=0.17mmとなります。
というわけで、最適空隙比の意味はよくわかりませんが、
文献①第5表(p58)のd=0.18mmとほぼ同じになりました。

ちなみに、トロイダルコアなどで切断した場合には、
Lの代わりにL-2dなどとして方程式を解く必要が出るかもしれません。

それから、実効インダクタンスについては
文献①によれば、Lp=4π・N^2・μ・A/(1+lg)10^9だそうですが、
文献②によれば、インダクタンスをLとして、
「さらに自己インダクタンスは単位電流あたりのコイルの鎖交数なので,
上式をNΦ=LI に代入してL=NΦ/I」とされており、
インダクタンスL0=NBA/I
(4π・10^-7)・(N^2)・A/{(L/μ)+2d}となります
(単位はすべて、メートル、アンペア、Lは磁路長)。

上記の例では、
L0=3137(回)・0.8テスラ/15.8×10-4(m^2)/0.08(A)
=49.56(H)
となりました。

これでようやく、出力トランス、チョークコイルの隙間の計算がきちんと出来るようになりました!!(大変でした。)

<追伸>
「「トランスの基本動作と材料」(「ラジオ技術」1993/4月~7月)鈴木道夫」を見ると、
磁力長Lの小文字が、どう見ても「1」と区別できず、「1」であると言われればそうなるような文字で、
それゆえ、①「アウトプットトランスの作り方」(「ラジオ技術」2001年/8月、9月)に誤植が生じたのではないか、とも思えます。この①では、明らかに「1」となっています(となりのLgとは字体が違いますから。)。

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