念願かなって、ようやく氏家式マランツ#7を作りました。
2度目のチャレンジです。1度目は、材料の曲げ加工などで疲れてしまい、いつの間にかやる気を失っていました。今はなきタンゴトランスは長らく使わずにしまっていました。
このアンプは、プリアンプでして、過去記事の「マニアなら知っておきたいオーディオ雑誌のお宝記事6 ネガティブフィードバック(NF)を用いたアンプ」でご紹介した「ラジオ技術」1998年/11月、12月、翌年1月)氏家高明先生の記事に基づいて作りました。
イコライザ部分にネガティブフィードバックに特徴があり、高度な回路技術により、過渡応答の追従性能が高いアンプとされています。
<2015年9月2日追記>
上の図では、ネガティブフィードバックの配線を忘れていました。
主要部品は、すでに持っているトランスと真空管を除き2万円3万5千円程度でした。過去記事の「部品購入サイトの部品のセットを記録し、再現する方法」をフル活用して、慎重に2つのサイトで注文しました
。
しかし、主要部品は、2万といえども、やれ穴開け加工だとか、工具だとか配線とか、足場のラグとかを追加購入し、また、ホームセンターを5回以上通って制作したので、かなりの道具代などを追加で使ってしまいました。
また、温度調整機能付きはんだコテを買い、過去記事の「単線の配線材を試す。ウェスタン電話線、銀メッキ1.0mm単線ジュンフロン、47研究所0.4mm 単線」で紹介した、銀メッキ線を100m大人買いをしてしまいました。
<9月2日追記>
最初の発注による購入は、慎重に慎重を重ね2万円ほどでしたが、追加した手持ちの22000μFのコンデンサ、シールド線、エンパイヤチューブ、配線材、足場のラグ、無線と実験で音のよいとされたはんだ、電源フィルタのコイル芯、WAGOの接続端子、ホールソー、ドリル等の加工工具などなどの追加を考えると、到底2万ではできませんでした。また、サブ基板の9ピン周り、入出力線のシールド線の処理などは、かなりの手間でしたから、2万円で入手できるわけではありません。
シャーシーを加工中に気付いたのですが、誤って、上下逆向きになってしまいました。
誤りに気付いた時には、かなりのショックでしたが、
箱は市販品を用いたので氏家先生のものと違い、底が開くタイプではなく、この配置のほうが部品に手が届きやすいのではないか、記事の中で徹底コピーを奨励する氏家先生でしたが逆向けでも、コピーの内容は同じではないかと気を取り直して、そのまま続行することにしました。機械加工で後戻りするのは、もう気力が残っていません。
当方のアンプは、アンプのサブブロックは、部品は異なれど実体配線図通りに作りました。
ただし、アンプのサブブロックは、以下の点が氏家式オリジナルと違います。
氏家式マランツ7は、リケンの抵抗、ASCのフィルムコン、電界コンはチュウブラですが、
当方は、リケンの抵抗がもうすでになく高いということから、管球王国で高評価だったタクマンの音響用抵抗を使いました。酸金を主体に数値がない場合にはカーボンを使いました。プレート抵抗などは、カーボンのワット数が大きいものを使いました。音決めの出力段の510Ωは、巻線抵抗が勧められていますが、ここもカーボンのワット数が大きいものを使いました。フィルムはASCですが、250μfの電解コンは、アトムにしました。また、チューブラの電解コンの一部は、せんごくさんで入手した東信の音響用のチューブラでないものを使っています。
さらに、後に真空管v1のアースは、直接B電源へ返すように短絡する改造をしました。
電源はオリジナルがセレンの半波整流、氏家先生のものが「オリジナルに執着しません」とあり、オリジナリティがある程度認められると判断して、少々のデフォルメを行いました。
電源基板の表側には、主にB電源を、裏側には、主にフィラメント電源を配置しました。
氏家式マランツ7では、フィラメント電源、B電源ともに、ニチコンの高価なCEW?(4、5千円)が使われていますが、コストダウンのため、基板用部品を使いました。フィラメント電源には、とくに信頼性が高い長寿命の、前身がOSコンのサンコン製(「おやぢラボ オーディオ製作記」に詳しい)。なお、後でフィラメント電源には、CEWを追加しました(後に述)。また、B電源用には600V5Aのローム製SICのダイオードを2つ直列で使いました。
それから、B電源は回路や実態配線図をなるべく踏襲し、Cもほぼ回路図通りとしましたが、まず、チューブラはネット上でウニコンはいまいちと調べ、22μはF&T、33μはRUBY GOLDを使いました。B、フィラメント電源とも「「自作コイルによる音質の改善」(「無線と実験」2013年/3月p65 沼口眞一)鉛筆に銅線を巻きつけた、空芯式のチョークインプット(沼口式チョーク)を採用しました(過去記事「マニアなら知っておきたいオーディオ雑誌のお宝記事1 簡易定インピーダンスアッテネータ ノイズ対策」)。
それから、電源としては、「①「バイボーラトランジスタの使い方を考える」という一連の記事」(過去記事「マニアなら知っておきたいオーディオ雑誌のお宝記事8 トランスの作り方」参照。)の石塚俊先生の一連の記事から、①両波整流の電圧を同じにするべく、抵抗を入れる、②ブリーダを91Bにならって、必要電流の1/3流す
を実践しました。Bには、必要電流の10倍の10mAを流すべく、部リーダ抵抗は43kとし、フィラメントは、18.3vに70Ω程度のブリーダ抵抗を突っ込んでいます。そのため電圧調整のためにR005はΩ数を下げました。
さらに、AC電源としては、(「無線と実験」2013年3月号p50~「音で判別するノイズ対策」安井章)に掲載の安井式の音響用電源フィルタを入れました。
また、配線材としては、銀メッキ1.0mm単線ジュンフロンを使い、その上にエンパイヤチューブをかぶせて色分けをしました。4色程度しか市販されていないので、電圧に応じて深い色とし、赤はB、緑は、V1、V2のB、黄色がフィラメントとしました。このアンプでは、この配線材の音が色濃く出ているようにも思います。
さらに、電源基板を容易に外せるよう、WAGO(露光機の検討、「fppr感光剤による露光の準備の検討4 露光機の検討の続き」で使った)の2端子を使った。
さらに、出力インピーダンスは、50k以上にすべきとなっており、
しょうがないので、手持ちのコーアのSPR(「koaの抵抗のSPR5は、最高だ!」)の43kを出力に直列して付けました。
<2015年9月2日追記>
ちなみに、ノイズ対策の途中で、パワーアンプの入力インピーダンス(プリアンプに負荷すべき出力インピーダンス43k)が高く、ノイズの影響を問題視して、氏家先生の記事を当たったところ、
氏家先生のその一連の記事では、
そのイコライザアンプに好適なコントロールアンプも発表されており、
その記事を見ると、50kΩの固定抵抗と、100kΩのボリュームとが、
負荷として直列に配列されていることに気付きました。
真空管は、v1、v2がフィリップスの高信頼管、V3がソブテックの12AX7WXTです。
以上を前提に、音を聞くと、
一言で言うと、強靭で迫力があり、低域が非常に重く低く、分厚いサウンドですね。
オーケストラなどが素晴らしいです。
強靭というためには、過渡応答が素早くないとできないはずです。
当初は分厚すぎて、音像が拡大しているのか、もっと解像度がほしいと思いましたが、
パワーアンプだけに戻すと、透明だけど薄いと思える。
聞きこんでいくと、ラッパなどが非常に実体感を帯びて聞こえる。
高域はこの抵抗の直列のせいか、パワーアンプの入力トランスとの整合か、
低域の迫力が大きいからなのか、よくわかりませんが、
早めにロールオフしているというようにも思え、聞くに堪えなかったバイオリン協奏曲などが聞きやすくなりました。
<2015年9月2日追記>
上の図では、ネガティブフィードバックの配線を追加すると、
ノイズもかなり削減され、周波数帯域が広がり、音像の拡大は少し減り、
しかし、速度の速い様子は変わりませんでした。
以前ノンネガティブフィードバックの状態で速度が遅くないと感じたのも、
パワーアンプのせいかもしれません。
次は、この氏家式マランツ7につき、
当初50mAもあったノイズを、2mAへ修正していった、調整過程を
説明しようと思います。